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ワンワン☆の雑記

大学生一年生、田舎生まれのつぶやき。

【小説】あーした、天気になーれ

 僕は、今日という日が晴れると確信していた。

 空を見ると太陽が容赦なく燃えている。これで二週間連続の快晴。

 この天気に満足しながらテレビをつける。「今日は今年一番の猛暑日になるでしょう」なんて、なんだか最近毎日聞いているような気がする。

 二週間連続、これはもう偶然じゃないな。

 僕は確認をするように、テレビと窓の外を交互に見ながら頬を緩めた。

「何をにやにやしてるの。暑さで頭がおかしくなった?」

 妹が心配そうに僕を見ている。だが僕はそれに反応せずに、壁にかかっているカレンダーを一瞥した。

 今日は六月中旬。梅雨真っ盛りである。

 それにも関わらず、ここしばらくぽつりとも雨が降っていない理由を、僕だけが知っている。

 

 

  *

 

 

 話は二週間前まで遡る。

 高校生の僕は平日のある日、いつものように教室で授業を受けていた。

 窓際の席から外を眺めると、梅雨特有の、風を伴わないまっすぐな雨が降り続いていた。

 雨は中途半端だ。いっそのこと、このまま校舎を押し流してくれれば爽快なのに。

 そんな僕の憂鬱は届かず、雨は洪水を引き起こすほどの勢いではなかった。

 机の上で頬杖をつく。非常に退屈だ。

 最近の授業は窓の外と時計を交互に見ている時間でしかなかった。

 昔からじっとしていることが苦手な僕は、家にいることが少なかった。家にいると、どうしてもできることが制限されてしまう。

 とにかくなんでもいいから体を使いたかった。

 動きたい。この調子だと今日の部活もグラウンドを使えないだろうな。

 欲求不満はエスカレートする。

 

 

 今すぐ走りたい。

 

 

 梅雨は一年でもっとも嫌いな時季だった。

 東アジアでは春夏秋冬に梅雨を加えた五季、さらに日本では秋雨を加えた六季の変化がはっきりと表れるらしい。

 実に迷惑な話だ。季節の移ろいは四季で十分に感じとることができる。梅雨なんていう中途半端な季節はいらない。それどころか、僕個人の意見を言わせてもらえば夏だけでも満足だというのに。

 なにより、雨が降っていると走ることができない。

 小中高と陸上競技を続けてきた僕にとって、それだけが日々を価値のあるものにできる行為だ。

 それならば雪がある冬は尚更嫌いそうなものだが、不思議とそちらはそうでもない。冬はそういうものだからと割り切ることができるからだろうか。梅雨にはもっと嫌な要素がたくさんあるからだろうか。

「聞いているのか萩原!」

 教師の一喝に考えが吹き飛び、ふと我に返る。教室中の視線が僕に集中している。

 ────しまった、授業中だった。

「お前が運動も勉強もできるのはわかっているけどな、そうぼけっとしているといつか痛い目に合うぞ。いいか萩原、自分だけが特別だと思いこむな」

 少し考え事をしていたくらいで大袈裟な。だが正論でもある。まったくいいことがない。

 どれもこれも全部、梅雨のせいだ。

 怒りの矛先を見失った僕は、どうしようもなく季節に八つ当たりをする。

「だから聞いているのか! 返事くらいしろ」

 おっと、まだ説教は続いていたのか。

 僕の態度が癇に障ったらしく、より一層教師の語調が荒くなる。

「最近の若いやつは気合が足りねえんだよ。なんでも自分の思い通りになると思ってやがる。やる気がないなら出て行け!」

 もうどうでもよくなっていた僕は、教師のその言葉を聞いた途端に吹っ切れた。どこか冷静に、あるかないかでいえば今はないな、と自分のやる気を分析する。

「やる気はありません」静かに声に出す。

 教室の他の生徒はざわつき始め、面白くなってきたぞと興奮している。お前たちの日常にちょっとしたイベントを起こしてやったんだから感謝しろ、と恩着せがましく心の中で呟く。

 教師は思わぬ応答に一瞬怯んだが、徐々に顔が紅潮していく。

「出て行きます」

 教師が何かを言いだす前に、教室から飛び出した。「待て!」と後ろから叫び声がする。

「嫌だね」

 今度は自分にだけ聞こえる声で囁く。

 

 

 結局捕まって長い間説教をされてしまった。

 本気で走れば中年の教師などに追いつかれるわけはないのだが、逃げ続ける以上向こうの怒りは収まらないのだと気づき、諦めた。

 教師の方が「やる気がないなら出て行け」と告げたにも関わらず、理不尽な叱責に僕は呆れかえった。

 ようやく解放されて外を見ると、まだ雨が降り続いている。

「はあ」

 溜め息とともに視線を下げると、自分の内履きが目に入る。あることを思いつき、右足を少し引き、そして思いっきり振り上げた。

「あーした、天気になーれ」

 靴を飛ばして、天気を占うなんていつぶりだろうか。

 弧を描きながら飛んでいく靴を追いながら、その先を見る。そこには女子がいた。

 そうだ、ここは廊下だ。

「あっ、危ない」

 僕の申し訳程度の忠告は間に合うはずもなく、彼女に衝突した。

「わっ、ごめん。大丈夫?」

 僕はさすがにまずいと思い、駆け寄った。

「……う、うん大丈夫。靴占い?」

 怪我はなかったものの、廊下で靴を飛ばした挙句、自分にぶつけてきた畜生に笑顔を向ける彼女の心の広さは計り知れない。

「うん。最近、雨ばかりだから」

「雨は嫌い?」

「外で走れないからね。古川もそうだろ?」

「私は結構好きだけどね。雨も」

 幼馴染の古川は、同じ陸上部員だ。女子に靴をぶつけるという大罪を犯しながらも少し安堵したのは、その相手が小さい時からよく知っている人物だったからだ。

 もう一度丁寧に謝ると、僕はその場を去った。

 その日の帰り道に、すべては始まったのだ。

 

 

 雨の中、傘をさしながら下校する。

 傘を使うとどうしても片手がふさがってしまう。この煩わしさも梅雨の嫌いな要素の一つだ。

 陰鬱な気分で歩いていると、いきなりスイッチが切り替わったかのように雨の勢いが強まった。

「げっ、最悪だ」

 家までの距離はまだ短くない。どこかで雨宿りをしようと辺りを見回すと、一軒の店が目に入る。

 五月雨薬局と看板に書いてある。

 こんな店、ここにあっただろうか。

 確か五月雨と書いて「さみだれ」と読むはずだ。よく覚えていないが、梅雨の別称だった気がする。

 薬局で雨宿りというのも妙だが、それよりも好奇心がまさって、僕は中に入った。

 

 

「いらっしゃい」

 受け答えたのは老人の店員だ。店内に他に人がいる気配はない。一見ただの薬局なのだが、言葉では言い表せないどことなく不思議な空気を感じた。

「雨、凄いですね」

「そうですね」

 話しかけられたので返答する。それにしても店内に二人というのは気まずい。

「なにか欲しい薬はありませんか? いろんな珍しい薬がありますよ」

 老人の店員が微笑を浮かべる。雨宿りをしにきただけなので別に、とも言えないので適当に応じる。

「じゃあ、惚れ薬とかありますかね」

 我ながらつまらない冗談だ。

「惚れ薬はないんですけどね」と困り顔を作る。「でも、晴れ薬ならありますよ」

 店員はそう言った。

「腫れ薬? 腫れたところに効くんですか?」

「いや、天気の晴れのことです。これを飲むと晴れ男になるんですよ」

 至って真面目に説明をする店員に、僕は首を傾げる。

「晴れ男、ですか」

「はい。知りませんかね、晴れ男」

「いや、あれですよね。その人がいると晴れになるっていう」

 それですそれ、と店員は頷く。

 なかなか面白い話だと思い、雨が止む間店員の冗談に付き合ってもいい気がしてきた。

 店員は棚からいろいろと怪しげな薬を取り出すと、僕の前に並べ始めた。

「そうですね、他にも姉妹商品で雨薬もありますよ」

 老人の店員はお構いなしに商品の宣伝を続けた。

「それを飲むと雨男になれるんですか?」

「その通り」

「じゃあ他にも、雪男や雪女になれる雪薬なんかもあるんですか」

 僕がそう訊くと「あはは、妖怪になる薬は置いてないですね」と店員は景気よく笑う。

「お兄さん面白いですね。晴れ薬を渡しますので、騙されたつもりで飲んでみてください」

 店員は小さな包みを僕に差し出した。

「すいません、いくらでしょうか」

 金額が大きければ断ろうと思った。というのも財布を家に忘れたことを、たった今思いだしたのだ。だが店員は笑顔をつくる。

「いえ、お代はいりません。プレゼントしますよ。お兄さんが気にいったのでね」

 ここで遠慮するのもかえって失礼かと思い、僕は手を伸ばした。

「はあ、そういうことなら」

 

 いつしか雨がやみ、店を出ると道に水たまりがたくさんできていた。

 小さい頃は長靴を履いてばしゃばしゃと水を飛ばして遊んでいたっけ、と懐かしみながらそれを避けて帰路を進んだ。

 家につくと、五月雨薬局の店員から貰った『晴れ薬』なるものをさっそく飲んでみた。晴れ男になれるということは好きなように天候を操れるとでもいうのだろうか。

 夜、布団に入る前に「明日は晴れますように」と祈った。あまり期待せずに目を閉じた。

 

 

  *

 

 

 翌日、空には見事な青空が広がっていた。久しぶりの晴れである。学校では誰もが傘をささずに登校できたことに喜んでいる。

 僕は驚いたが、この時点では薬の効力について半信半疑で、偶然だろうと思っていた。

 しかし、それから毎日晴れを願い続け、二週間経った今も天気晴郎である。

 なるほど、こういうことか。

 鏡の前に立ち、僕は晴れ男になったのか、と心の中で自分自身に確認をする。晴れ男という表現がなんとも滑稽で、自嘲めいた笑みを浮かべた。

 

 

 その次の日は、晴れではなかった。

 だが僕は動じずに、むしろ喜びで溢れていた。

 これで完全に確信した。この力は本物だ。

 昨夜は、いつもとは逆に「明日は晴れませんように」とわざわざ願っていたのだ。二週間の晴れは偶然ではなく、僕が晴れてほしいと願ったからこそ起こったと実感する。

 好きな時にだけ、天気を晴れにできる。

 これも超能力と呼べるだろうか。なんて地味な能力だろうと無性に愉快になる。

 僕はこの能力をしっかりと把握するために、いろいろなことを試し始めた。

 まず、他の天気に変えることはできるのか。これは無理だった。「晴れにする」か「晴れにしない」かは選べても、その時に雨が降るか曇っているかは、僕の意思では操ることができなかった。あくまでも「晴れ」が専門らしい。

 次に、どのタイミングでも晴れにすることができるのか。これはもしかしたらできるかもしれないと思ったのだが、無理だった。どういうことかというと、晴れでない時に「今この瞬間に晴れてくれ」と願っても叶わないということだ。どうやら、前日の時点で「明日は晴れてくれ」と頼むことが能力の条件らしい。

 

 

  *

 

 

 僕は晴れでない日を時折挟みながら、能力を使い続けた。そしてしばらく経ったある日。この日は体育の授業が外であるので、晴れにしていた。

 ホームルームの時間に、週末に行われる体育祭の話が出た。クラスから男女一名ずつが出場する選抜リレーの代表決めだ。

 男子は瞬間的に決定した。僕だ。クラスで唯一の陸上部である僕が走ることに満場一致のようだった。

 ところが問題は女子。なかなか名乗り出ようとする人がいない。沈黙が続く。

「古川さんって陸上部だよね?」

 女子の一人が古川に向かって訊ねる。

「うん、そうだけど」

「じゃあさ、リレー出てくれないかな?」

 その女子の提案にクラス中が期待を寄せたのがわかった。

「……うーん、じゃあ出ようかな」

 一瞬古川が困った表情をしたように見えたが、結局女子も有り触れたやり取りで決まった。

 実際に古川は相当足が速い。僕と同じくずっと陸上競技を続けてきたので、下手な男子にも負けないスピードだ。クラスの代表としては申し分ない。

 キーンコーンカーンコーン。

 チャイムが鳴り号令をした後、授業の準備のため席を立つ。

 その時、古川が僕の方に近づいてきた。

「あ、萩原も同じ代表だよね」

「ああ、頑張ろうな。クラスのみんなも古川に結構期待しているみたいだぞ」

 古川が少しだけ強張った表情を作る。何か不味いことを言ったかと思い、「体育祭もすぐだから練習しないとな」と慌てて付け足した。

「当日、晴れるといいね」

古川がそう言ったので「絶対に晴れるよ」と真顔で答えた。

「自信満々だね。本当に晴れる気がしてきた」

 本当に晴れるのだ。

 僕がそう願うならば。

 

 

  *

 

 

「最近、晴れの日が多くないか?」

 そう言われて、どきりとした。

「そうかな。でも一昨日は雨だったよ」

「今は梅雨なんだから、本来それは珍しくないだろ。例年と比較しても晴れの日が異常に多いってテレビで言っていた」

 友人の相原とはよく昼休みを共に過ごす。相原は勉強こそできないが、ふとした時に人を動揺させるような核心めいたことを言う。それが意図的だとは思えなかったが、僕は彼のそういうところに一目置いていた。

 弁当を食べながら不意に天気のことを聞かれ、内心焦った。

 この焦りは罪の意識なんだろうか。いや、そもそも晴れにするのは悪いことではないだろう、と都合よく思った。

「晴れが嫌なのか?」

「いや、ただ不思議だなと思ってさ。でも」

 相原は水筒に入ったお茶を喉に流し込んでから言った。

「晴ればかりだと少し困るかな」

「それは、どうして」

 相原が苦笑する。

「お前みたいなスポーツマンだけじゃないんだぜ。家でのんびり過ごしたい人もいるさ」

「晴れでも家の中で過ごすことはできるじゃないか。でも雨なら外で走ることは難しい。不公平だ」

「不公平ってことはないと思うが言いたいことはわかる。でもな、なんというか俺は雨そのものが好きなんだよ」

 衝撃だった。

 僕にとっては昔から雨は害でしかなかったが、それを好む人もいるのだ。

 そんな当然の事実を上手く理解できない。

 だって、雨の日は走れないじゃないか。

「まあ、体育祭くらいは晴れてほしいさ」

 弁当を食べ終わった相原がそう言った。

 僕の箸は長い間止まったままだった。

 

 

  *

 

 

 体育祭まではあっという間だった。

 しかし当日、目が覚めた僕は耳を疑った。

 しばらく聞いていなかったが、この忌まわしい音は聞き覚えがある。────雨だ。

 そんな馬鹿な、と引きちぎるような勢いで部屋のカーテンを開け放つ。

 蒸し暑さが吹き飛ぶような豪快な雨だった。

 どういうことだ。確かに昨夜は間違いなく、寝る前に翌日の晴れを願った。

 僕は可能性を考える。

 薬の期限切れ? いや、そんな説明は聞いていないぞ。

 慌てて着替えて家を飛び出すと、土砂降りの中を五月雨薬局めがけて走った。

 なんとなく根拠のない不安はあったのだが、そこに店はなかった。まるで何年も前から何も建っていないかのような綺麗な空き地だった。

 薬局も、晴れ薬も、この能力も、すべて夢だったのだろうか。呆然と立ちつくしながらそう考える。困惑しながらも仕方がないので、僕は学校に向かった。

 

 

 体育祭は延期になり、午前中に授業をやって放課になった。

 降りやまない雨を玄関で眺め、現在の天気を改めて認識する。

 なぜ、晴れなかったのだろうか。

 久しぶりにぼけっとそんなことを考えていると、突然隣りから声をかけられた。

「晴れなかったね」

 声の主は古川だった。

「ああ、不思議なことに」

 僕は古川の方を向く。そして古川が傘を持っていないことに気づいた。そんな僕の視線を感じたのか彼女は答えた。

「久しぶりに雨だったから傘を忘れてしまいました。行きは親に送ってもらったんだけど」

 おどけながらそう言ったドジな幼馴染に、相変わらずだなあと僕は呆れる。

「傘貸すよ」

 僕が傘を差し出すと彼女は首を横に振った。

「それは悪いよ。一本しかないんでしょ?」

「当たり前だ。二本も三本も持ってくるわけがないだろ」

 僕の好意を彼女は受け取ろうとしない。

「このまま走って帰る。あ、知ってた? 雨の時は歩くよりも走った方が、当たる雨の量が少ないんだって」

「傘をさす方が当たらないに決まっている。雨に当たると風邪をひくぞ」

 僕が紳士的に言うと、古川は意地でも受け取らないといったふうに反対の方を向く。

「私が使ったら、萩原が風邪をひくじゃん」

 形だけでも僕を気遣ってくれているのが嬉しい。

「生憎僕はバカだから、風邪をひかないんだ」

「奇遇だね。私もそれだよ」

「ばーか」

「ばーか」

 雨は次から次へと落ちてくる。しばらく雲が休んでくれる様子はない。

 

 

 どうして傘があるのに、雨がやむのを待っているのか。それが不思議でならないが仕方ない。

 相合傘をするつもりは、今のところない。

 他の生徒はとっとと下校している。

 隣には古川がいる。

「実を言うと、晴れなくてよかったって思ってる」

 脈絡なく彼女がそう切り出す。

「なんで? 体育祭延期になったじゃん」

「だから、延期になってよかったって思ってる」

 古川がそう思う理由が僕には考えつかなかった。

 彼女が続ける。

「リレー、やりたくなかったんだよね」

「えっ」

「クラスのみんなが過度に期待しちゃってて、それに応えられるかが凄く不安だった」

 意外だった。そんなことを考えていたのか。

「古川、速いじゃん。そんな心配無用だと思うけど」

「結構緊張するんだよ。朝起きたら雨で本当に安心したもん」

「雨で喜ぶ人って案外いるんだな」

「うん。雨の音ってよく耳をすませば、意外と良い音なんだよ」

 聴覚的に雨を捉えるなど、考えたこともない。

 試しに黙って耳に神経を集中させる。

「悪くないな」

「でしょ」

 雨に感謝するなど、僕には考えられないことだった。

 そもそも今日雨が降ったのは、僕が天気を晴れにできなかったからだ。

 その瞬間に僕の記憶が反芻され、いろいろなことが繋がった。どういうわけか、忘れかけていた教師の言葉が頭で再び響いた。

 

 

「いいか萩原、自分だけが特別だと思いこむな」

 

 

「そういうことか」

 僕はそう呟く。

「え?」と振り向いた彼女に僕は言った。

「古川って雨女でしょ」

 そう言うと彼女は一瞬驚いたような顔になりすぐに微笑んだ。確信はなかったがそうだろうという自信がどこかから湧いていた。どうやら僕の予想はあたりらしい。

 そして古川は昔から察しがいい。

「あの薬、ちょっと苦くない?」

「うん、ちょっとね」

 雨はまったく弱まる様子がない。これからはしばらく雨の日が続くのだろう。仕方がないから、彼女が雨を止ませるまで待とうじゃないか。

 それは、そんなに先じゃない気がした。

 結局、あの薬局がなんだったのかは未だにわからないし、ずっと晴れが続いたのも、これから雨が降り続けるのも、偶然なのか必然なのかわからない。

 でも、今の僕にはそれらはどうでもいいことのように感じられた。

 それでも晴れが好きな僕は、一日でも早く雨が止むように、心の中で唱える。

 あーした、天気になーれ。

 

 

<あとがき>

 

自作の小説をブログにあげるのは二回目だ。これはちょうど一年くらい前に書いたもので、梅雨の時期ということで思い出した。

 

やはり過去の作品を読み返すと今だったらこうするなとか、ここの文章読みにくいなとか思うんだが、少しずつでもマシになってきているということだから良しとしよう。

 

この物語の一番の欠点は俺自身が運動嫌いなので、主人公に共感できないまま書いたことだろうか。今回も読んでくれてありがとう。感想をもらえたら泣いて喜ぶ。

 

【過去の記事】

【小説】ダイヤルトーン - ワンワン☆の日記